流舞結晶 〜冬のクジラとさいかい〜
こしごえ

それから(あ…

涙のさめる速度で
失ってゆく
かつての海原へ
予感する視線がまっすぐ立ち
地軸のかたむきをなぞる
そっと
(夢を瞳の奥に燃やしている核心
のぼっていった少しばかりのゆらめきが
ほそくほほえみながら手をふっている
降って来たのですわ
無限遠の焦点から
白く白い響き白くあふれる
(なぜ ふるえるの
くりかえし果てるのに
終らないの
始まるわ
失うとは)

一粒一粒が
大地を流れ
大空おおぞらを漂い
故郷を眺望して
帆は風をとらえ
断崖の波を越えて
微睡まどろみと並行する


   少女の青ク

青いクジラがえている
ふるえる水泡で
ちいさなまなこが
酸素欠乏して弾けてしまった

相変らず眼は わたしで
その視線と視線があうことは
滅多になくって
合せ鏡をしたときくらいかしら
あなたはどこにいるの

新宿の
落書らくがきに人知れず出くわしたのは
三年前の四時限目
「失うってどういうこと)っ
てきいたら
手をふりながら、ぷふぃ

失笑を買った少女は
がっかりはしたけれど
目薬をさしてそのまま
花園で空を見あげた
無いものねだりは致しません」

余計な空白もなく
涙していいのだ
わたしはそこにいる
透けた風の輝きに
そよぎ覚醒して
見つめていてほしい
うがつ連繋の次元

青く吼えている
まだまだ
ちょっぴりと、弾けているのかしら


響きつつ
ゆっくりと
ゆっくりと舞う
雪のつらなる残像の冷淡な熱が黒髪を灯す
終らないの
始まるわ
失うとは
白紙にかえすということ)

青い空を吸いこみ 深水に泳ぐ
あの朝と同じ空気のしびれが、しん と
結びつくきらめき
終りなき サイレンス









※タイトルの「流舞(るぶ)」は造語です。





自由詩 流舞結晶 〜冬のクジラとさいかい〜 Copyright こしごえ 2006-12-10 14:47:58
notebook Home 戻る