ネジが転がっているので
たもつ


友人の部屋の隅っこに
ネジが一本転がっているので。

「このネジ何?」
「どうやら俺のものらしい」
拾い上げて見ると確かに友人の名前が書いてある
「そりゃそうだろう、お前の部屋に落ちてるんだから」
「いや、俺自身の部品らしい。1ヶ月程前、俺の身体から落ちた」

そう言う友人は煙草を吸いたそうにしているが
ライターを理解できないでいるらしい

「でも、あれだな、人間、ネジの1本くらいなくても生きていけるってわかったよ」
「結局、オチはそういう人生の教訓話か」
「かもね」
「俺もネジが落ちたりするのかな」
「そもそも、おまえ、ネジ無いだろ。だってスポンジなんだもん」

そう、シャワーが壊れていたのだ
しばらく友人と話した後でシャワーを借り
たっぷり体中に水分を含ませ
家に帰る

自分の重みで水分が沁み出さないように
注意を払って
歩くのだ




自由詩 ネジが転がっているので Copyright たもつ 2004-03-29 13:54:44
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