眠れぬ朝に実験する(親指1000字エッセイ)
佐々宝砂

睡眠薬服んだのに朝になってしまった。眠るの大好き、夜の夢大好きな人なので不満である。眠れぬ夜は本を読む習慣だが、眠れぬ朝はどうしたものか。私の枕元の本はみなホラーで、朝の光に似つかわしくない。悩んだ挙句、こうして携帯で散文を書いてみている。個人的にはじめての試みだから、一応実験だ。

文章というものは、何を用いて書くかによって変化する。少なくとも私の場合はかなり激しく変化する。句会で筆を使わされたときは、つい書きやすい文字を選んでしまった。一般的な原稿用紙を使うと、まのびする気がして外来語が減る。ワープロの使いはじめは漢字が増えた。IME、ATOK、ことえりなどなど、どの日本語変換システムを使うかでも違ってくる。漢字の選択肢がかわるし、予測変換を使えば語彙すらかわる。

表面的にすらそんなふうに一転二転するのが私だ。いったい私に核はあるのだろうかとふと思うが、特に不安はない。

私の奥に何があるか私は知らない。所詮そこらで拾い集めたガラクタだろうが、なんか危険物でもあると楽しいなあ。そんなことを思ってこれを書きはじめたのだが、どうも今朝の携帯には危険物が隠れていないようだ。残念無念。


散文(批評随筆小説等) 眠れぬ朝に実験する(親指1000字エッセイ) Copyright 佐々宝砂 2006-12-03 08:24:15
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