透明なルリル
藍静

読みかけの雑誌を開いたまま あのひとが
透明なルリルになってしまった

笑みもそのまま ときめきもそのままに
ガラスのルリルになってしまった

うす青い 摩天楼の最上階
ここでは 音がこぼれるほど寒く
影がはがれるほど何もない

ルリルを戻せるものは きっと
地上の喧騒 地上の倦怠
居心地のいいここを降りたくないけれど
ルリルを想い

下りエレベーターを呼びましょう

唄を抱いたまま あのひとが
透明なルリルになってしまったから
それだから


自由詩 透明なルリル Copyright 藍静 2006-12-02 18:21:24縦
notebook Home 戻る  過去 未来