肉食のすずめ

雲だらけの

住居 見知らぬ
住居だらけの
風景が切れて
河だった

対岸が見えない
河だった

流れる音が聞こえない
河だった

歩きつかれて
白土の土手に
腰を下ろした
壊れたサンダルを放って

水を飲みながら
ビスケットをかじった
明るい水の隅に
緑の汚れが漂う

白い犬が近づいて
隣に座った
犬は
左耳が無くて
そこから
脳が見えていた
蝿が多く飛んでいた

こちらを見ているので
ビスケットを少しやった

すぐに食べ終えて
こちらを見ているので
何もやらなかった


雲が切れて


光が現れた
地平線まで続く水鏡は
日照り続きの三月を
白亜の岸に
溢れかえらせた
大きな

大きな
光の中
時折
蝿が犬の脳に停まり
その度
少し痙攣して涙を流す
犬は少し死んでいた
少しずつ死んで
私の隣に
いた

私は
前髪を少しあげ
左耳に少し触れて
少し
鼻水を流した



犬が光っている

私が光っている

ほんの
少しだけど

光っている




自由詩Copyright 肉食のすずめ 2006-12-01 19:25:14
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