全ての負け犬に告ぐ
虹村 凌

全ての負け犬よ
拳を握れ
ポケットの中で
コートの内側で
机の下で
拳を握れ負け犬よ
その手に意思を握りこんで
拳を硬く握れ
意思を握りこんだその手は何よりも硬く
誰にもほどけない硬さになるからだ

全ての負け犬よ
拳を掲げるんだ
誰もいない早朝の教室で
授業中に空っぽの屋上で
真夜中の自分の部屋で
意思を握りこんだ拳を掲げるんだ
誰にも届かない高さに掲げた拳は
何よりも高く美しく輝いて
その意思をもっと硬いものにするからだ

全ての負け犬よ
お前達の愛した世界は否定された
何故だ?
脳味噌が空っぽの腐った人間によって
誰かと叩き落す事しか知ら無い人間によって
快楽の為だけの生殖行為しか興味の無い人間によって
お前達の愛した世界は腐らされてしまった
お前達の愛した世界は駄目にされてしまった
負け犬達よ
今こそ立ち上がる時なのだ
気違い扱いされて
弾かれて
痛めつけられた日々の底で
その日々の底で積み上げた意思で
その意思を握りこんだ拳で
その掲げ上げた拳で
世界に教えてやらねばならないのだ
全ての負け犬よ
お前達は知っている
気違い扱いされる苦しみを
弾かれる痛さを
痛めつけられる事の酷さを
負け犬達よ
お前達全てが仲間なのだ
勝った気で寛いでいる奴等の寝首を
勝った気で惚けている奴等の喉笛を
掻き切り噛み裂いてやるのだ
負け犬達よ
お前等が示してやるのだ
お前達の愛した世界が正しかったのだと
拳を握れよ負け犬達
世界はお前達の握られたそのひとつひとつの拳にかかっている
負け犬達よ
俺もまたお前達を愛している
愛する負け犬達よ
拳を握るのだ


自由詩 全ての負け犬に告ぐ Copyright 虹村 凌 2006-11-30 13:05:39縦
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