手紙
藍静

甦るのは思い出だけです
断片という名の時の死体です
「昨日は、昨日は、昨日は」と繰り返す事がARTだと囁く幽霊が日常です。
あなた今22歳で ボクは25歳
驚きの年代はもう過ぎた話です
ところがあなたの刹那はいまだにARTであり続けるのに
僕の夜は戦いの場ではなくなりました
あなたの指は魔法を知っているのにボクの歯は総入歯
不公平なる公平に気付いたら
そこからはもう今迄が思い出になってしまいます
耳で見ることも目隠しを喜ぶ事も溜息の彼方に消滅します
だからあなたの前に広がる闇が闇であるあいだは あなたの味方です
だからあなたが見ている百鬼夜行は歩いている限りあなたの力です
昨日を見ている自分に会ったら叱咤して笑って嘆いて廻りなさい
あなたは今という過去と今という未来が同居する不自然さが自然となる人だから
さあ、目を見開いて 目の前に拡がる大海原に急ぎなさい

 ―― 結婚する妹へ ――


自由詩 手紙 Copyright 藍静 2006-11-26 20:24:09縦
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