いつかギラギラしなくなる日
虹村 凌

あなたはいつも優しい眼で見ているのに
今日は何だかギラギラしているわ
帰って頂戴


鼓膜を突き破り脳味噌に突き立てられた言葉と
眼球を破り矢張り脳味噌に突き立てられたお前の後姿
湿気た煙草をふかして歩くこの姿はまるで
炎天下を転げ回るヨモギみたいに
街から街へ駅から駅へ
弾かれていく
水が欲しい

ミルクに氷を入れる女だった

乾燥しきった唇で愛を囁いて
舌なめずり
頭の中は君の乳首を甘く食む事で一杯で
唇は更に乾燥していく
まるで砂漠に毒々しく照りつける憎々しい太陽
眼の奥では君は既に全裸なんだぜ

それは一瞬で噛み砕かれた

遮光カーテンの隙間から差し込む光が
ベッドの上の醜い芋虫達を照らす
籠の中のハムスターが恨めしそうに見ていた
ハムスターから眼を逸らせて
次に眼が合ったのは
舌を長く伸ばして舐め上げる君の眼
即座に逸らせた眼は
天井をギラギラと輝かせる光を追って
まるで鳥が魚を捕まえるように

口から溢れて滴り落ちた

あなたはいつも優しい眼で見ているのに
今日は何だかギラギラしているわ
帰って頂戴
女は口元を拭いながらそう言うと
背を向けて二度と口を開かなかった


自由詩 いつかギラギラしなくなる日 Copyright 虹村 凌 2006-11-25 15:08:18
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