「さよなら」はもう言わない
恋月 ぴの

季節はもう冬支度なのに
たんぽぽの綿毛になるんだと
あなたは言った
過ぎ去った日々を惜しむかのように
ひとびとは
大きな樅の木の下に集いだす
そんな季節に
たんぽぽの綿毛になるんだと
あなたは言った
どうしてそんなことを言い出したのか
身の上に何が起こったのか
わたしには知る術はないのだけど
あなたがくれた言葉のひとつひとつ
わたしのこころの中で
いつも優しく微笑んでくれるから
北の風に吹かれ飛んでいった
あなたの姿を
わたしは追い求めたりはしない
出会いがあって
別れがある
そして
あなたが「デラシネ」と名づけた
一輪のたんぽぽ
どこかできっと咲いている


自由詩 「さよなら」はもう言わない Copyright 恋月 ぴの 2006-11-21 23:48:30
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