黒いノート
塔野夏子
僕の黒いノートの表紙に
ときどき
窓が出来ていることがある
その向こうで
君のかなしみが
淡い落下をいつまでもつづけている
(背景はいつも夏の
誰彼時
(
たそがれどき
)
か
彼誰時
(
かはたれどき
)
だ)
僕はそのたび
君のそのかなしみを
撃ち抜きたい
と思う
けれどその術があろうはずもなく
そんなときいつも僕の背後で
愛しい
という言葉が
触れがたく可憐な波紋をひろげている
僕の指は
黒いノートの表紙の上で震えている
自由詩
黒いノート
Copyright
塔野夏子
2006-11-19 18:42:18