森を歩く
はらだまさる

だれも知らない
森を
ただひとり
泥濘を
重い足取りで
水に似た空気を
からだ一杯に
吸い込んで
役立たずの
想像力を
ぶら提げて
モーツァルトにも
創れない音楽を
肌に含んで
気の合う枝を拾って
きれいな褐色の
落葉を踏んで
だれも知らない
誰かのままで
覚束無い感情で
密やかに
生き続けていた
風を匂い
苔生す路を
深い森を
歩く

冷たさと
ざわめきと
温もりと
静寂を



歩く






自由詩 森を歩く Copyright はらだまさる 2006-11-19 11:32:15
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