空港バス
ku-mi

いくつものカーブを慣れたように
空港まで走るバス
世界をさえぎるような山に囲まれ
小さな集落を過ぎれば
また同じ景色が流れる

赤い絵の具をこぼしたような山
人はそれを美しいと言う
低血圧の寝起きには鮮やか過ぎて
それがあまり好きではないけれど
町の歩道で
もみじの一片に目を奪われた

やがて来る冬の前に
用意されている想いがある
目に見えないものを
繋がっているかどうかを確かめたくて
ずっと握りしめている携帯電話
ここにいても
届かないことはわかっているのに

最後の深いカーブに合わせ体を揺らす
そうやって順応していくことは
なんてことない

人のまばらな空港バス
降車口が吐き出していくそれぞれの想い
作り話を添えながら
曲がった背中を見送る

肺に届いた空気はひんやりしていて
いつもよりも目覚めがいいような
錯覚でもいいから
もう一度ふかく息を吸った


自由詩 空港バス Copyright ku-mi 2006-11-18 03:08:28
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