空港バス
ku-mi
いくつものカーブを慣れたように
空港まで走るバス
世界をさえぎるような山に囲まれ
小さな集落を過ぎれば
また同じ景色が流れる
赤い絵の具をこぼしたような山
人はそれを美しいと言う
低血圧の寝起きには鮮やか過ぎて
それがあまり好きではないけれど
町の歩道で
もみじの一片に目を奪われた
やがて来る冬の前に
用意されている想いがある
目に見えないものを
繋がっているかどうかを確かめたくて
ずっと握りしめている携帯電話
ここにいても
届かないことはわかっているのに
最後の深いカーブに合わせ体を揺らす
そうやって順応していくことは
なんてことない
人のまばらな空港バス
降車口が吐き出していくそれぞれの想い
作り話を添えながら
曲がった背中を見送る
肺に届いた空気はひんやりしていて
いつもよりも目覚めがいいような
錯覚でもいいから
もう一度ふかく息を吸った