たとえば
ごまたれ
たとえば
あたしがこうしてパソコンに向かっている間
森林がものすごい勢いで消えていって
いくつもの種類の生き物が絶滅していたり
たとえば
あたしがタバコを一本吸っている間
死を決意する人がいて
涙も出ないくらい
絶望に打ち萎れている人もいたり
たとえば
あたしが
「あたしがいてもいなくても」って思っている間
彼らはそう言葉にできないまま
消えていったり
たとえば
彼らが最後に
やっとの思いでため息をついたとして
そのため息は
揺れて
風に舞い上がって
色づくこともなく
その存在が知られる術もなく
あてもなく
揺れ続けてたとして
たとえば
今吹かれている風に
そのため息が紛れ込んでるかもなんて
そう考え付いたあたしなんかには
もう何もできなくて
そのため息も
もう吹かれ続けて彷徨うしかない
たとえば
一日だって
一時間だって
一分だって
人が変わるには十分な時間なのに
彼らが残したため息は
何にも変われない
ただ
彼らのため息があるかもわからない
この街を眺め続け
歩き続けることしかできない