「 あたしのあだしのくん、三。 」
PULL.







あだしのくんは、
ときどき冷たくなる。

あたしの隣で眠っていると、
あだしのくんのからだが冷たくなる。
あだしのくんの蒼白い肌が、
さらに蒼く透きとおって、
手も足も冷たくなる。
血の気が引いた唇からは、
か細い息が漏れ、
全身が震えて冷たく、
凍りついたようになる。
あたしは裸になって、
全身で、
あだしのくんを抱きしめる、
あたためる。
あだしのくんの震えはとまらない。
どんどん冷たくなってゆく。
あたしは恐くなって、
強く、
あだしのくんを抱きしめる。
ひとつになって、
あたしのあたたかさが、
あだしのくんに伝わるように、
もっと強く強く、
あだしのくんを抱きしめる。
だけど、
あたしのからだも冷たくなって、
あだしのくんと一緒に冷たくなって、
凍りついてゆく。


目がさめると、
もう朝になっていて、
あだしのくんも、
あたしも、
全身汗だくになっている。
あだしのくんは冷たくなくて、
いつものあだしのくんに戻っている。

あだしのくんは照れくさそうに、
「ありがとう。」
という。
あたしはあだしのくんの鼻を、
つまんでぺろり、
ひと舐めする。
あだしのくんがぐいっと、
あたしを引きよせる。
あたしとあだしのくんは、
また汗をかいて、
ひとつになる。

それから数日、
あたしのからだは冷たくなる。
からだの芯が冷えてしまったのだ。
あだしのくんは、
そんなあたしのからだを、
やさしく撫でて抱きしめて、
あたためてくれる。


あたしとあだしのくんは、
そんな夜を、
かさねている。












           了。



自由詩 「 あたしのあだしのくん、三。 」 Copyright PULL. 2006-11-15 06:15:14
notebook Home 戻る