ひとつ かぞえて
木立 悟
ひとつの炎がてのひらにいて
手のひらのかたちからあふれては
熱も音も伝えずに
あふれつづけるそのままでいる
蒼い羽とむらさきの矢が
吹き荒れていた夜は明け
白い髪 白い花と葉
白い陽のなか揺れ眩む
暗がりへ暗がりへ向かうとき
ふいにかたわらに立つ縦の光が
ゆうるりと傾きを導いて
静かな笑みの色ははじまる
ひとつの指で
見えない珠を数えている
数はなくなる
かたちはなくなる
曇があつまり
光を囲む
ひとつ ふたつ
まばゆいけだもの
地の辺 空の辺は冷え
音は音もなく波紋に変わる
炎はこぼれ あふれながら
見えないものを数えつづける