断崖(黒薔薇の微笑 其の一)
恋月 ぴの

おんなにとっての
それは囚われ
深遠の亀裂より鉄鎖を垂らし
おんなは生きる
獣は獣
下履きから覗かせる鉄鎖を
見も知らぬ男に掴まれたとしたら
それが悲恋物語の序章
秋の日の静寂に我が身を投じ
そんな男の理不尽な仕打ちに焦がれる
(こんなにだなんて辱めないで
いつまでも果てしなく囚われの身
(あい あい あい
(愛を恵んでください
それがおんな
男を誘う仕草で幸せの深さをはかり
息が詰まりそうなまで
胎内奥深く放たれた野卑な仕業に
身ごもる破滅への甘美な予兆
(それは泥濘の上げる産声にも似て
鉄鎖に絡みつく蒼い陰の疼きに
濡れた唇を緋色の口紅で縁取れば
甘噛みの切ない誘惑に戸惑い
(ああ しどとぬれそぼってしまうわ
おんなはひとり風の舞う断崖に立つ




自由詩 断崖(黒薔薇の微笑 其の一) Copyright 恋月 ぴの 2006-11-12 07:05:09縦
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