「 あたしのあだしのくん、一。 」
PULL.







あだしのくんのことを話そう。

あたしのあだしのくんは、
あたしの恋人である。

どんな恋人なのかといえば、
あたしのあだしのくんは、
彼氏というには顔が女っぽく、
彼女というには身も心も男っぽい。
そんな恋人である。

どれぐらい女っぽいのかといえば、
あたしとデートしている最中に、
他の男から言い寄られたり、
女優としてスカウトされたりするぐらい、
女っぽい。

どれぐらい男っぽいのかといえば、
そういう連中に向かって、
にっこり笑って、
中指を立てるぐらい、
男っぽい。

あたしのあだしのくんは人気者だ。
あだしのくんのまわりには、
いつも人がいて、
みんなあだしのくんを求めてる。
だけどあだしのくんが求めるのは、
あたしだけ。

あたしといるときだけ、
あだしのくんは、
ただのあだしのくんになる。
ただのあだしのくんは、
あたししか知らない。

あだしのくんは、
そういう恋人である。
そういう恋人であるあだしのくんは、
あたしのあだしのくんである。
なのであたしは、
あだしのくんの恋人なのである。












           了。



自由詩 「 あたしのあだしのくん、一。 」 Copyright PULL. 2006-11-11 09:41:30縦
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