ささめゆき
Rin K

かみ合わない歯車に、また少しだけ時がずれる

秒針のきしみは それでも
壊れたメトロノームのように 私を、
追うから
逃げ込んだいつかの雪原で 私は、
細雪がわずかに切れる夢を見た



あの日、こぼれた冬の音を
私はまだ両手に受けている

守るように包めば それは
するすると溶け出して
歯車を少しずつ、
少しずつ滑らかに回した

あの日 同じような細雪の、
隙間から見た空は
わたしと私の結び目をぼかして、また
今年の冬に広がってゆく
満たされて、溺れてしまわないように
精一杯の深呼吸をしたら
懐かしい、淡く曇ったバニラの香がした そして、
ここにも確かに冬が来る



時は、今もかすかにずれている
いつかの雪原は。
地図にはない




自由詩 ささめゆき Copyright Rin K 2006-11-10 23:40:07
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