黒猫の星
水在らあらあ



                    
?.

まだ葉が落ちない
白樺の上に
黒猫がいる
のを
見ている
うつくしい猫で
目が
とくにきれい
久しぶりだけれど
思い出どおりで
それで
つらくなって
冷蔵庫開けて
ワイン
なくて
とりあえず
思い出を
冷凍庫に
しまおうとしたけど
まだ
暖かくて
たぶん
うちの
小っちゃい冷凍庫じゃ
凍らないから
そのまま
つまみに
します
ここ最近
そういう
ことです

買って来て


?.

中心核の温度が一億度になって
水素が融合してできた君の心が
赤色巨星へと変わっていって

赤色巨星になった君の心が
大量のオゾンを放出し始めて
25センチの屈折望遠鏡で僕は君を見ている
目の前で

高速回転とか始めて
理論的には可能だったりして
直径わずか10キロメートル程度の中性子星を
わざと考えたりして

君を思う僕の心は
光速に近い速度で崩壊し続ける
それでも

死滅するのに
何十億年もかかるぜ

であったりしなきゃよかった



?.


(あの、またたかない星は、なんですか)

(あれは、星の卵じゃよ)

(星は、卵のときは、またたかないんですか)

(疑いがないからな)

(そうしたらほしぼしのキラキラは、疑いなんですか)

(うまれると、質量が、うしなわれてゆくんじゃよ)

(そうすると、あの星から見て、ぼくはまたたいているのだろうか)

(ああ、またたいている)

(おじいさんも、またたいているんですか)

(わしには、もう、またたくだけの、、希望がない)

(そしたら、おじいさんは、星の卵と一緒なんですか)

(あすこに見える、影と一緒じゃよ)



?.


その瞬間の君の回転速度に
冬の夕方
僕はひきつけられ

肉眼で見えるうちで
七色以上に見えた
それはマスカラのせいじゃなくて

アンドロメダ星雲への距離よりも遠いぜ
何枚も重ね着するから

向き合う表面温度が高まる現象のことだ
光度曲線は複雑になって
てのひらの 荒れた肌と
足のつけねの くびれた宇宙

その瞬間の君の回転速度に
冬の夕方
僕はひきつけられ

(どうして僕の銀河だけが他の銀河よりも嘆かなきゃいけないのか)

そして客星があらわれ
君は
柔らかな黒い毛玉の星になって
その隣に寄り添う 


遠ざかって 遠ざかって さらに動かない
遠ざかって 遠ざかって さらに動かない




?.

それでどうなるのって
どうするのって
君は尋ねた
それを

ずっと
考えている もっと いろんなことを
分っていればよかった 防波堤で そう思って
かもめに 叫んだりする カモメは 聴覚をやられて ぐらぐらする

まあ

酒は飲むし
けんかして
ぼろくそに殴られたり
血が ながれたりさ 涙の代わりに 流れろ

すきだ 純情だ すきだった
今でも 好きだけど パニーニ 食べてる
君がね 食べてって 言って 俺に 食べてって 言った
そういう 君がね 君がね

もうなんにも 言わないよ 

パニーニはもう 
ないしさ
二度と
食べないしさ
まあいいや
そうしたら


どっかいきな
いっちまいな

どっか

俺が作った
エンジンのないふねで

そしてまわりな
俺が立つ
この星のまわりを

やさしさに

みちて



















自由詩 黒猫の星 Copyright 水在らあらあ 2006-11-09 09:26:35縦
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