Chrysalisis
マッドビースト

ガラス窓の夜に写った瞳が少女のようにきれいになっていることを願っては瞼を開く
二十二時の電車に乗っているのはみんな旅人
人生の意味を探す旅の途中だ

ガラスの中で半透明の自分はやはり疲れた目をしたままで夜の影に重なっている
遠くに見えるビルの赤色等
なにか素敵なものが見えるかもしれないからと目を凝らす
そびえるビルはまっ黒だ
薄暗い夜の中
夜が湧き出す原因であるかのように
私達の街の中心
私達の文明の中心
空を刺すように打ち立てられたテクノロジー

古い深緑の七人がけのシートでは
旅人達が眠る
スーツの男が夢を見ている
少女が鋭い目で握り締めた携帯の端末を見つめている


街は眠る
さなぎのように硬く見えない甲殻を閉じて
新しい時間を待つのではくて
自分が古い時間を忘れるのを待って

眠る眠る
街は静かに夜に浸っている
自分の次の姿の夢を見ている
一日の労働に
千切れかけの紫の羽を閉じて
私達も眠る
さなぎになって
明日にはまた新しい羽ででかける
旅の続きに




未詩・独白 Chrysalisis Copyright マッドビースト 2006-11-03 23:03:10
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