復唱
砧 和日

イチジクの実の組立てが壊れて
甘いものだけが畳の上にこぼれた
あえなく絶えた通信の最後に
とても明確なかたちでお別れを告げて
甘いものだけがどこまでも遠くへ転がり続けた
あたりいちめんの下り坂を
はじめから知っていたような事柄があり
けれどまたそのことを知り初めるために
白い白い障子紙の 格子の一つを突き破って
かぶと虫が室内に入ってくる


自由詩 復唱 Copyright 砧 和日 2006-10-15 02:03:39
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