遠浅
いとう




大陸棚の向こうで誰かが手招きしている
見慣れない服を着て、砂っぽく笑っている
傍らには、けだものがいて、何か囁いている

規則正しい波の音が
回転する灯と溶け合っていく
灯が波の引き際のみを照らし
海は夜の中どこまでも引いていく
手招きは、罪の証だ
大陸棚の先、海溝の奥の
たくさんの死骸のことを考える
私はひとりだ
どこまでもひとりだ





未詩・独白 遠浅 Copyright いとう 2004-03-15 19:06:31
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