せっけん 
服部 剛

プラスティックケースの上に 
並んでる、ふたつのせっけん 

小さいほうが、お婆さん 
大きいほうが、息子さん 


「 生まれた時は逆だったのに 
  わたしに向かってハイハイしてたのに 
  あんたいつのまに、大きくなったねぇ・・・ 」 

「 母さんずいぶん小さくなっちゃって・・・
  そんなに身をすり減らして、
  誰かの汚れをきれいに落として来たんだねぇ・・・ 」  


ふたつ並んだせっけんは 
今日も疲れた誰かの汚れを落とすでしょう 
明日も目覚めの顔を洗うでしょう 

まっ白だった昔より 
少々汚れた身だけれど 
ずいぶん角もとれてきて 
やがて欠片かけらとなって消えるまで 
誰かの両手に挟まれて 
黙って泡をたてるでしょう 





自由詩 せっけん  Copyright 服部 剛 2006-10-02 03:43:11縦
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