緑の目
木立 悟



なびくもののない
丘の斜面に
影はなびき
空へ向かう
影はいつも
空へ向かう


色は草から
外れかける
外れかけたまま
そよぎつづける


陸橋の陰
枯れ川の路
足跡の光
居ぬものの声


交差する風と土壁は
花と鉄の柵に仕切られ
草はまばらに
季節をあざむく


晴れは若く
青は低く
過ぎ去りやすい隔たりに
白く午後を溶かしている


昇る水の背
まばたきの音
重さはひとつ
空に着く影


葉が持ち上げる 葉と同じ熱
風は止み 音はつづき
木々を追う青のまなざしに
くりかえしにじみ あふれている


どこにも赤は見えないのに
たしかに赤が流れる白の
かがやき反りかえる翼の向く先
空が空へはばたくとき
空が空を突き破るとき


飛び立つものは見えなくなり
寒さはさらにひとりを歩む
空に沈んだ森たちの遍歴
忘れぬかぎりありつづけ
忘れぬかぎり鳴り響く














自由詩 緑の目 Copyright 木立 悟 2006-09-22 13:19:58
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