夜のほつれ
木立 悟




夜のほつれ ほとつのあいだ
横に走るいなびかり
音もかたちもないいなびかり


森に隠れた生きものの息
道にあふれ 坂を流れ
滝のように崖から落ちる


すぎるもの すぎるもの
ただそのままをすぎてゆくもの
野に立つ光に満ちる傷跡


崖の途中にぶら下がる
いびつな骨はわたし自身
喉がひろく切り裂かれている


釘でできた赤子は香る
釘がいずれ香りやら
香りがいずれ赤子やら


かたむきのほうへとまわるからだ
かたむきへかたむきへかたむきへ
見えないらせんを描くからだ


夜になると動き出す骨
いくら肉をまとっても
誰かとつながることができない


夜のほつれ 蒼の道づれ
はた織りを濡らす水の糸
赤子の衣に変わる糸













自由詩 夜のほつれ Copyright 木立 悟 2006-09-14 18:15:15
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