夜のほつれ
木立 悟
夜のほつれ ほとつのあいだ
横に走るいなびかり
音もかたちもないいなびかり
森に隠れた生きものの息
道にあふれ 坂を流れ
滝のように崖から落ちる
すぎるもの すぎるもの
ただそのままをすぎてゆくもの
野に立つ光に満ちる傷跡
崖の途中にぶら下がる
いびつな骨はわたし自身
喉がひろく切り裂かれている
釘でできた赤子は香る
釘がいずれ香りやら
香りがいずれ赤子やら
かたむきのほうへとまわるからだ
かたむきへかたむきへかたむきへ
見えないらせんを描くからだ
夜になると動き出す骨
いくら肉をまとっても
誰かとつながることができない
夜のほつれ 蒼の道づれ
はた織りを濡らす水の糸
赤子の衣に変わる糸