瑞祥をめざして
前田ふむふむ


溢れるほど、満ち足りた言葉に、埋め尽くされて、
わたしは、天空を飛翔する鳥のように、
爽やかなひかりの音階の裾野に舞い降りる。

花々は寄り添い、一面を、湿潤な色香の帯を輝かせて、
痩せた暗闇をほどいていく。

東の空の産声に靡いている、子供たちの祈りが
讃美の間隙を浄化して、
あなたの広野がいっせいに色づいていく。
波打つ風は、森を走る色彩の淀みを、
滑らかに青く固めて、
森のみずを生きる、青い鳥の囀りを、
めがしらに乗せて。
ああ、滴る喜びの頬を、実りの色に染め急ぐ、
秋はほろ酔いの時を泳ぎわたる。

季節は楕円を整えて、弧を限りなく丸くして、
流れるいのちの欠片を均等に揃えて。

わたしは、あなたの清らかな手に惹かれて、
至福の階段を昇りつめようとして、
透明な星座がつどう十字路にむかって
手を伸ばしてみる。

意志は、声をたおやかにして、謳いを膨らませて――。

盲目のひかりを浴びた船乗りは、
赤く滲んだ批評の旗を掲げて、
七色の海原の嘆きを越えてゆくだろう。

降りゆく朱雲を眺めた農夫は、
耕土を支える、みずの歌、
深く地底を流れる、永遠の祈りの声を聴くだろう。

ふたたびの序奏がしらべを広げて、
わたしは、いく度も、
嬉々とした白昼の往路に、翼をのばして、
瑞祥の目覚めを、さきがけるのだ。


自由詩 瑞祥をめざして Copyright 前田ふむふむ 2006-09-07 19:36:02
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