『アボカド、な午後』
川村 透

昼下がり、
アボカドを喰べながら新聞をナナメ読み
焦げ臭いコーヒーカップの居場所をくんくんくん、鼻と指で探りながらその上
つけっぱなしのTVにぼんやり耳を奪われたまま
彼女は広告の裏に、いたずら書きを始める。
ドラマ、ニュース、CM、それともワイドショー、あるいはコラム、
三面記事、社説、読者のページ、どこ、から届いたのか、わからないが
彼女のもうひとつの指と鉛筆は、そのコトバをそのココロでぼんやりとなぞっていて、
いつのまにか一筆書きの絵のように、に・く・し・ん、−肉親−
と、書いていた。
なにげなく数秒の空白がカウントされてから、気まぐれに、ふと
新聞からさらにナナメに視線を落し広告の裏、まさにその
とんがった鉛と、獰猛なマニキュアの指先に意識を移した一瞬、
彼女は、それを、に・く・し・み、−憎しみ−
と、読んでいた。


ずきん、と肩で反応する彼女の
プリミティブでアボカドな午後
新聞紙上を賑わせる、みたいに、立体的でアブストラクトに喰べ散らかされたアボカド
その果肉模様、な、象形文字を、口に運ぶのも忘れて
TVはデタラメな鳥のコトバをさえずり彼女のメガネは微妙にずり落ちて照準をずらし
ブレイクをカウントするもうひとつの指は銃爪を求めてテーブル上をさまよい、
彼女とコーヒーカップとの安らかな、再会、には、
ほんの少しまだ何かが、−君の名は−、なのだった。



            −−−ドラマ、トラウマ、ニュース、アボカド。


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プリミティブ(Primitive)
アボカド(Avocado) わになし 熱帯産果実
獰猛な果実

Primitive/Avocado-afternoon
2001/06/22 (金) 4:22 p.m. FCV UP


自由詩 『アボカド、な午後』 Copyright 川村 透 2004-03-09 20:00:43
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