煙草男と風穴女
虹村 凌

足元には陰毛の様に黒々とした謎の植物が繁殖していて
いちいち気をつけないと靴が脱げそうになる
時折、瀕死の老人の様な顔をした赤ん坊程の大きさの飛蝗が飛び交う
精液の様に濁った池の中からは
熊のような蛙がニヤニヤとこちらを見ている
空にはジャンボジェット機程のカラスが飛び交い
死肉を漁ろうと言うのか、数は増える一方である

目的の館の中からは一向に向かえは来ず
私は仕方なしに煙草に火をつける
足元を野太い蛇がすり抜けるが気にする事は無い
私はそう言って側に立っていた全裸の女を抱き寄せた
今更気づいたが彼女は上半身が無い
正確に言えば上半身が風穴だらけで向こうの景色が見えるのだ
私は羽織っていたコートをかけてやり
短くなった煙草を投げ捨てた

それは葬儀の参列のように長い蛇に当たり
私は目をきつく閉じた


自由詩 煙草男と風穴女 Copyright 虹村 凌 2006-09-04 10:51:27縦
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