放課後
落合朱美



夕映えに長く伸びた影の 
手足のしなやかに動くのを 
美しいと見惚れた 

サッカーボールが弾むたびに 
視線が鋭く光るのも 
伸びかけの髪をかきあげて 
おどけて笑う口元も 
触れてみたいと望みながら 
挨拶を交わすことさえできないまま 
冴えない自分が歯痒くて 

放課後の図書室から
見下ろすグランドは 
開けっ広げで輝いて見えるのに 
入ってゆけない場所に思えた 

号令 歓声 土を蹴る音 
耳を閉ざして読みかけの本を貪る 


後ろ姿に眼差し
 
いつか両手いっぱいに抱えた本を 
なにも言わずに半分持ってくれた
あの眼差しが優しい色をうかべて 
背中に注がれていることなど 
気付きもせずに





自由詩 放課後 Copyright 落合朱美 2006-09-02 22:48:53縦
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