遺書
若原光彦

私が死んでも
私を壊した人達は
きっとなんとも思わない
ごめんね
ごめんね
私は毎日懸命に死のうとしているよ

いくつも戦いに出向いてきたのは
誰かが私を殺してくれるんじゃないかって
私から全ての力を
希望を奪ってくれるんじゃないかって
でも違った
私が会えたのは無神経な人達で
優しくて鈍感で無礼で適当で手ぬるくて温かくて
軽はずみに
命をつついてきただけだった
誰も私を止めてくれなかった
直してもくれなかった

人殺しが好きなんだよ
私は
みんな殺してしまいたいの
殺されたいの
これ以上壊れたまま壊れた町で
壊れた人達と壊れた毎日を続けていたくないの
壊れた自分を完璧に始末したいんだよ
戦って
戦って大好きな殺し合いの中で
最高の戦闘で絶命したいのよ

私が死んでも
きっと誰もなんにも思わない
ごめんね
そうあるべきなの
私にはそんな価値ないんだよ
ただ死のうとしているだけなのに
もう生き返りたくないのに
戦うたびに強くなってしまって
またいい加減に生き残っていくんだよ


自由詩 遺書 Copyright 若原光彦 2006-08-29 06:02:24
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