送り火
Rin K

五山の文字の
ゆえんなど知りません
それでも私は
わずかに香る炎が尽き
夜が少し涼しくなるのを
ただ待っているのです

まだきっとどこかで生きているだろう
あなたを見送っているのです

もう二度と
抱かれることもなければ
振り払われることもない
今宵はそれを
確かめにきたのです

遠き火に 遠き日を
重ねてみるとほんのすこし
火の玉が滲んで
大粒に見えました
川面でたゆたう月影のように

灯火が消えて
空がぬばたまの闇を纏えば
都の夏は終わりです
風になったあなたと暮らした
私の夏も終えました

いつの間にか鼻緒で痛めた足を
かすかに引き摺ると
燃え残った炭で名前を記すような
そんな感触が

     砂利道すら
       ああ なぜこんなに
          こんなにもやわらかい




自由詩 送り火 Copyright Rin K 2006-08-18 22:49:22縦
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