渡月橋
Rin.

水面にゆがむ月よ
滑らかならぬ蒼白い顔は
私を待っていたのでしょうか
それとも見送ってくれるのでしょうか

足を止めると
あなたはきらりと
涙を放ったように見えましたが
驕りだったようですね
きらり
それはあなたではなく

空を仰げども
欄干を抱いて手を延べようとも
人はあなたに届かない
憧憬を胸に渡るより道はない
あなたをまたぐ端

振り向けば幸せが逃げるという言い伝えは
指先をすり抜けた夜を
手繰り寄せることが意味を為さないからでしょう
きっと

嵐山 名に追う山風 吹き降ろし
この背を押します
あなたの影が滲みます
風のせいにして
もう行きますね

青白い月の頬に
紅の薄い花片が
なでるように色を差しました
この花を
   百日紅と
     この月を
        立待と
          この橋を 
             渡月橋と


自由詩 渡月橋 Copyright Rin. 2006-07-31 01:17:33
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