海へ
銀猫

さびれた歩道橋の上で
夏を見上げると
空、空 
本当に海まで続いているのだろうか


この橋の下を流れる車の群れが
緩やかな河口付近の川だったらいい
時折陽射しに煌めくヘルメットが
そこに跳ねる魚だったらいい
向こうに見える松林が砂防林だったらいい

そして
その先に
僅かずつ起伏を繰り返す浜が続き
言葉が掻き消されるくらいの海風と波
そういう景色が連なっていたらもっといい


   海が遠い


この胸をかき乱す言葉や
届けられずにいる幾多の思いを
そこらじゅうに放り出し
そうして
思い切りざぶざぶと波を蹴散らし
服をびしょぬれにしたまま
砂まみれになって子供のように笑いたいのだ


   海は遠い
   ここから





自由詩 海へ Copyright 銀猫 2006-07-30 15:12:19縦
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