夏水
霜天

このようにして
夏を取り巻く呼吸は
やがて薄れていくのです
擦り剥いてしまった、膝のような
削られていく私たちを
夏空はどんなふうに
抱いてくれるでしょう


グラスの中の氷は
きしきしと音を立てて、痛む
零れそうな水を
一杯に口に含むと
目の奥のほうが、縮んで
世界は生まれ変わる

きっと、そのために
次の季節を望む言葉と一緒に
追いかけ、留まり、行過ぎて
微笑だけが残るのでしょう
夏の畦道は
誰を拾い上げるための一本道、なのか
知るためじゃなく
知らせるために


壁のスイッチをひとつ、入れるたびに
夏から少しずつ、離れていく
思い残しを積み上げて
夏水をまた、少し含む
削られている私たちを
抱きしめている夏は
少し寒い、と
笑うでしょうか


すべては、予定
やがて薄れていくのです
光る畦道
麦藁帽子の葬列
いろんなものが行過ぎて
蝉の声ひとつにも
届かない


自由詩 夏水 Copyright 霜天 2006-07-30 01:41:46
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