驟雨の足音、あどけなく
たりぽん(大理 奔)

夜を乗り越える呪文
古いノートの落書きから思い出す
詠み方を忘れた大人には
雑踏に落ちている足音に似て
あどけなく残酷な

季節を乗り越える呪文
変色した写真の束から探し出す
今日しか知らない子供には
雷雲から降るひょうに似て
無意味な恐怖だけで

本当に乗り越えてきたのだろうか
心ごまかして呪文を詠みながら
「みんなとおなじ」を「普通」と
「みんながすき」を「孤独」と
そんなふうに塗り固めて

自分を乗り越える呪文が
あることすら知らなかったから
誰かの名前を呼び続ける
二人でなら同じ足音
驟雨の音でかき消せる

互いしか知らない
季節の匂いを
あどけなく残酷に



自由詩 驟雨の足音、あどけなく Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-07-29 16:21:34
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