生活
葉leaf

密集した小さな穴々から、予覚された円柱へと、いくつもの湯の筋が地の粗い曲線を描きこむ。湯の筋に閉じ込められた空間は火のゆらぎをきざしているが、私の体によって、様々な輝度から破壊される。この瞬間にも、時間が印刷されてゆく。光を組成するものや「あなた」を組成するものが少しずつ腰のあたりに積み重なり、都市の表情をわずかに吸い取ってゆく。私は側面が規則正しくえぐられた短い円柱を回転させるが、そのこととは無関係に湯の筋が死滅する。青くて薄い繊維の複合体へと、皮膚の水々はつまずいて行き、私は皮膚にうがたれた穴々が夜の(いき)によって匿されていることを知る。

私は両手で樹脂の棒を握り、足裏の抵抗を回転させて、私だけの(いき)に襲われる。街灯は永遠に売られているのだが、私は霧ばかりを買い込んでしまい、それを骨の白さであがなっている。老人は少しずつ大きくなり、私のみぎわで電滅する。私は首を回転させることで彼をたやすく産みまた殺すことができる。私は街の錨のようなものから散り落ちたひとつの発電体にすぎず、表面を覆ううすい闇を人々と分かち合っている。金属棒に圧力を加えると、密度の違った(いき)が私を刺し、夜の鞍点へと散らばる。地面を踏むと、影は枝分かれして無数の回答を持ち帰ってくる。

視線とことばとしぐさの応酬のなかにひとつの構造が走る。構造とは方形の涙であり、むしろほの白く私の肉を溶かしてゆく。彼は紙上の文字たちを剥離することができないので、私が神経の先で切り出してやる。腐乱し感光する文字たちを撃つことで、彼の髪の色は少しずつ移ろってゆく。彼は時おり肉体の中に消えてしまうので、私は衛星の(いき)を越えて彼の重心にふたたび点火する。無数の等高線から速度を受け継いだのち、私は彼を産んだ女と、視線とことばとしぐさを交換する。ひとつの機能がよぎるが、機能とは球形の病である。私は足の付いた木の板に座っていて、しきりに液体を飲んでいる。

綿の入った袋にはさまれて、私は背中の圧力を数え上げる。彫り上げられた私の表情は、情火の(いき)にてざわめき続ける。私の体は涸れた空洞となり、音波と化した昼の樹々が音もなく反響している。夜は都市を繰り返し、血液は私を繰り返し、月は世界を繰り返す。いつもの部屋は体熱の(いき)を越えて散開してゆき、私は新しい部屋を受胎しようとしている。……私は大地となり、大地の上を歩く私を眺めている。私は海になることもできるのだが、歩いている私の行き先を知ってしまったために大地でとどまっている。私のなかの死んだ少女が語り始める。私は少女がいとおしくてたまらない……


自由詩 生活 Copyright 葉leaf 2006-07-28 15:52:03
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