いちきゅっぱ症候群
落合朱美



A子(主婦39歳)は嘆いていた
価格破壊の世の中を


街を見渡せば
いたるところに100円ショップ
 (なのにレジでは105円取られるのよね)
超ディスカウントショップも蔓延してる
 (おんなじものがここでは95円だったりするのよ)

買い物上手ともてはやされた
過去の栄光が懐かしい

 「あら、A子さん。そのスカート素敵ね。高かったんでしょう?」
 「あら〜、これなんかいちきゅっぱだったのよ」
 「え〜〜〜、見えないわぁ。アナタってほんと買い物上手ね」

 「奥さん奥さん!3丁目のスーパーで特売よ!
  いちきゅっぱよ!お野菜もお魚もいちきゅっぱ均一よ!」
 「まぁ大変、行かなくちゃ!」

いちきゅっぱ、いちきゅっぱ

なんてステキ響きなんだろう
いちきゅっぱ、と聞くだけで
なんでも安いと思えたあの頃

いちまるまるなんてピンとこないし
きゅうごなんて語呂が悪いわ
誰もが買い物上手になれる世の中
こんなのつまんないじゃない
買い物するならいちきゅっぱ
そうよやっぱりいちきゅっぱじゃなきゃ



ぶつぶつとつぶやきつつA子は今日も
ワゴンセールの198円スリッパを横目にいそいそと
100円均一コーナーへと足をはこぶのであった





自由詩 いちきゅっぱ症候群 Copyright 落合朱美 2006-07-27 05:34:09
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