祝福
霜天





「輪郭はね、大きすぎない方がいいと思うんだ。
    両手を、こう。ゆらりと、一杯に広げたくらいの」




朝の電車は
どこかに海の匂いが紛れている
だから皆、溺れたような顔になって
いつも、何かにつかまろうと思いつめている

息継ぎは
何も混ざらないリズム
空を区切る線を越えて
君たちは
泳いで

夜と朝の境目が見える
張り巡らされた線の、一つひとつ
躓きながら繰り返す
眠りごとに
目覚めごとに
そんな、痛むことも忘れて


削られていくような、夏の
まだ残されている自由帳
まっしろなページを汚すたびに
輪郭が段々ぼやけていくような
呼吸を
その分だけ
隣の誰かが混ざっていくように


息継ぎをする
呼吸をする
心音が膨れて
広げた両手から、君が送信されていく
吐息は
祝福
君の境界がいつか
空に重なるまで


自由詩 祝福 Copyright 霜天 2006-07-26 00:53:16
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