優しい人へ
bjorn

顔も思い出せない人だけど
その声も聞けないけれど
もしも叶えられるなら
せめてその眠りを妨げるものから
あなたを守りたい

言葉が溢れて眠れぬ夜には
その話をただ聞いてみたい
あなたが寝息をたてるころには
そっとシーツをかけるから
あなたが風邪を引かないように

徹夜明けで出たあとは
片付けをして帰りを待っていたい
掃除は苦手なようだから
もちろん食事も作っておくね
他には何もできないけれど

忘れた傘を届けることも
眠いあなたを迎えに行くのも
同じところで笑ったり
お疲れさまとか大丈夫とか
声をかけることすらできないけれど

どこか遠くの場所から
もっと遥かな人々の
嘆きや憂いや哀しみに
そのたましいを震わせて

いつも難しい本を手に取って
言葉も通じぬ人々の
声なき声に耳を澄ませて
出来ることは何かと思いを綴る

手の届かない人だけど
まだ何も知らないけれど
もしも許してもらえるのなら
せめてその笑顔が絶えないよう
あなたのために祈りたい


自由詩 優しい人へ Copyright bjorn 2006-07-25 22:01:34
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