奇譚 番町ミニカー屋敷
恋月 ぴの

わたし疑われています
あのひとがとても大切にしている
ミニカーがどうしても一台足らないと
夜毎わたしを問い詰めては
狂ったように折檻を繰返すのです
わたし紅薔薇婦人じゃないのに
緋色のロープで吊るされて
団鬼六きどりのあの人に鞭を振るわれて
一度だって触ったことなんかないのに
あのひとに何度も繰返し懇願しても
決して許してくれない
(おまたが…裂けてしまいます
何でも鑑定団で紹介された
あのひとご自慢のミニカーコレクション
(いちだぁ〜い
(にだぁ〜い
(さんだぁ〜い
(…
(きゅうだぁ〜い
嗚呼…やっぱり一台足らない
あのひとが大切にしているミニカー
わたしを殺して古井戸へ投げ込む気かしら
でも古井戸なんてここらには無いし
いまどき幽霊なんてイケてない
ガンプラじゃまずいのかしら
ジーアイジョーなら何とかするのに
(ちょっと羽織なんか脱がないで
わたし あの北岡がとても憎い
あいつがコレクションを誉めなければ
あのひとも有頂天にはならなかったのに
(いちだぁ〜い
(にだぁ〜い
(さんだぁ〜い
(…
(きゅうだぁ〜い
嗚呼…どうしても一台足らない
あのひとが大切にしているコギーのミニカー
「う。ら。め。し。や〜」
ヤフオクに出品されていないかしら
でも
わたし
か弱いおんなだから
例え出品されていたとしても
おあしが足らなくては落とせない
(いっぽ〜ん
(にほ〜ん
嗚呼…おあしが…何故か足らないの



なんてイタイ落ちなのでしょう
照れ隠しに扇子なんかで叩いたりして



おあしがよろしいようで…




自由詩 奇譚 番町ミニカー屋敷 Copyright 恋月 ぴの 2006-07-24 06:22:31
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