駅・湯浅
たりぽん(大理 奔)

学校を卒業して
実家に戻った君から
普段と違う調子で
不意に電話が入る
ずいぶん遠い町に住む君と
昨夜同じ受話器から
おやすみと言ったばかりの僕は
醤油の有名な町で
働き暮らしていた

駅に居るから迎えに来て
君の声に
疑問符ばかりの僕は
それでも急いで
君の分のヘルメットを持って
RZ250を走らせる

待合室の木のベンチで
小さな手荷物だけ抱きしめて君は
来ちゃったって一言
親と喧嘩して家出してきたと

駅舎の軒下で
虫取り器がジジッと
小さな音をたてる
むし暑くなりかけたある日

さっきまで疑問符だらけだった僕は
小さく笑って
もう帰らなくてもいいんじゃないの
って言うと
今度は君が
疑問符だらけの顔になる

特急くろしおが
少しハングオンしながら
ホームを駆け抜けて
風が
ほんの少し君の頬を
なでたみたいだ




自由詩 駅・湯浅 Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-07-20 17:51:53
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。