月と黒猫
千月 話子

  (誰かが泣く夜の 月は足跡だらけ)


夕立の30分後の車の下の
猫 濡れねずみで
のの字にくるまり
もうすぐ月のやって来る夜


あの子の心根から
零れ落ちましたよ リン と
赤い首輪の共鳴する鈴
涙の形で


月は櫛
三日月ならば 黒髪を
梳いて光る 半円になる


黒猫の鳴く 蝉の啼く
月夜を横切る 切ない流星
願い事さえ 聞こえない空


かつお節ひらひらと
煮干しふるふる あの子の白い手
蒔いて(舞いて)は呼ぶよ
爪には 半月


息を止めて5秒間
夜空は見守り ちりとも言わず
心通わせ 「あそこにいるね」
「ここにいるよ」


金の目と 黒い目の出会って
少女の髪留め はずれたら
流れ落ちるの 三日月は
中空で引力 
月母も探していたので
みんな 幸せ


縁側で月見しよ
後ろの正面 黒猫と
黒髪の女の子です
三角形の 月と 猫 ね子


   
 


自由詩 月と黒猫 Copyright 千月 話子 2006-07-19 23:08:42
notebook Home 戻る  過去 未来