我を忘れて
bjorn

ひとりごとを呟きながら
誰もいない部屋に戻り
今日会った人のことを思い
誰かの気持ちを推し量って
どうでもいい話を熱心に聞いて
そんな日々を繰り返して

グラスに浮かべた氷が
琥珀色に溶けあい音を立て
ゆらめく小さな焔が
いくつもの影をおどらせる
ゆっくりと世界は遠のいて
雨の音だけが親密で

ねぇ、どうして?
聞きたいことと伝えたいこと
今でもたくさん残っているのに
まだ何も言っていないのに
あなたはもうその先を見ていて
私だけ取り残されて

いつも誰かを求めているの
いつも欲しいものがあるの
あなたのような気がしただけ
それを与えてくれるのが
夢を見ていたかっただけ
過酷な日々から抜け出して

ただ我を忘れて
あなたに溺れてみたかっただけ


自由詩 我を忘れて Copyright bjorn 2006-07-18 22:48:50
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