冷たい雨の降る夜に
bjorn

部屋に明かりを灯す人もない
窓から西日が差し込むだけ
夜更かしを誰も咎めない
そんなひとりの週末はただ
遠いあの日の記憶をたどる

不器用な子どもをあやすよう
怖がらないでと小さな声で
あなたは私を抱き寄せた
冷たい雨の降る夜に
煙草の吸殻とバスローブ
今もこの肌に残るあなたの匂い

もしも望みが叶うなら
静かに流れるノクターンも
セピアに染まる夕暮れも
あなたと一緒に分けたいけれど
逢うことはもうないの
別々の道を選んだあとで

取り残されたのは私だけ
叶わぬ夢に彷徨いながら
時が過ぎるのを待っている
記憶が薄れて擦り切れて
消えてしまうのを待っている


自由詩 冷たい雨の降る夜に Copyright bjorn 2006-07-17 22:29:19
notebook Home 戻る