百合の花のように
恋月 ぴの

どんな蝶でも蜜を求める花に
好き嫌いがあるように
あなたの望む花と
わたしのなりたい花には
どうしても相容れないものが
あるのかも知れない
たとえば地味目なおんなのひとがいて
百人のおとこのひとに尋ねてみれば
九十九人は魅力がないといい
一人のひとだけ魅力があるといった
たった一人のおとこのひと
それでもそのひとは何かを感じて
何かを見いだして
魅力的だと答えたのだろうか
あなたの望む花は
九十九人のひとに愛される花で
わたしのなりたい花は
たった一人のひとだけに愛される花
そんなひとに
何かを感じてもらいたくて
何かを見いだしてもらいたくて
うだるような夏の暑さにもくじけず
百合の花のように咲いていよう
わたしのまわりに群れる蝶は
アオスジアゲハばかりで
わたしのひそやかな蜜に届かなくても
誰にも気付かれなくても
いつかはきっと
いつかは必ず
そ知らぬ顔で点滅する信号機に
ちょっと大またで横断歩道を急ぎ足
うなじからシャツに滴る汗を気にして


自由詩 百合の花のように Copyright 恋月 ぴの 2006-07-16 06:54:30縦
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