へりくだる
あおば





車輪の下という小説が売れるので
透明板ガラスを溶融
車の下敷きという文房具を試作する

『凸凹になった波形は
薄い光が虹色に染まるまで
何度も何度も重なって
麗しいハーモニーを奏でます』

宣伝文句は出来たのに
試作品はとても脆弱
粗末な扱いには耐えられず
分厚い文机の隅に陣取って
写経の人は注意深く筆を置く

騒擾罪をまき散らす
各駅停車の待ち合わせ
時間稼ぎの特急電車
ゴトゴト走らす日向道
無軌条電車のすれ違い
走り抜く日々の怠慢
強権発動機の唸り声
ぶんぶん回る
車輪の下の
陸蒸気
光を求めて
へりくだる


自由詩 へりくだる Copyright あおば 2006-07-16 01:24:03縦
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