「ささくれの背中」
木賊ゾク
時計のない部屋で羽ばたいても
自分が鳥じゃないと知るばかり
飛んでも堕ちていくのは
飛び魚でもなく
人間だからだ
助けあい
潰しあう醜さ
サヨナラしたくて
崩れた翼で
飛び始める
飛行機は便利だし
最近は宇宙に行ける
でも飛べない
本当の空は
雨の降らない町の
空の雲のように
憂いた空気がなくなって
明日は飛べればいい
翼のいらない
空へ向かって
少しの食糧と
衣服だけ持って
明日は飛べればいいが
色の無い空で
羽ばたいても
自分がそれじゃないと知るばかり
三階の窓
開けていてくれた
羽ばたけない良心
帰らない背中