石榴の花と黒揚羽
LEO

肌の全部が
湿った薄い膜で被われて
少しの息苦しさで
満ちている午後

畳の跡がついてしまうかしら
そう思いながらも
まるで猫の昼寝の如く
時折どこからか吹いてくる風で
意識を保っている

ぼんやり
本当にぼんやり
目線をおくっていた先に
ちらちら映るものがあった
私を含めすべての動きが停止した中で
それはだんだんに誇張されてゆく
ちららちらちらから
ひらりひらひらへと
断片的に見えていたのが
約束された動きをはっきり捉え
石榴の木のまわりを舞う

石榴の花は
そのさきをツンと尖らせ
それはまるで赤い唇のよう
 
 約束は
 揚羽蝶の口づけか

黒い羽は休むことなく
花から花へと移るものだから
私は視線を這わせ行方を追って

そのときの私の眼も
揚羽蝶と同じだったに違いない
赤い花、黒い羽、
赤い花、黒い羽、
吸い寄せられように
ひらひら、ひらひら
焼きつく夏

傍目には
ただ虚ろな眼差しにしか
見えなかったとしても




自由詩 石榴の花と黒揚羽 Copyright LEO 2006-07-13 21:51:48縦
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