AUSENCIA
水在らあらあ

N・Kに





魚がいる
魚についばまれている
ちいさな
魚たちに

僕は部屋に一人で
いつか君と飲んだ
ひどく安いワインを飲んでいる
DON・SIMONの
ブリックパックの
1リットル50セントの

水は澄んでいる
魚がいる
君が
裸で
いる

勇敢な

僕は500ミリのワインを飲み乾す
そしてまた注いで
500ミリ

(お願いだから目を開けてくれ)

イギリスにいた頃僕らは二人して空を呪っていた
若かった僕らはそれでよかった
小さな海辺の町で
君はいろんな男と寝ていた
僕はそんな君が実は少しうらやましかったりもした
そんな思い切りもなかった僕は刺青とかして
ナイフで
血が
でた
日々

魚がいる
魚についばまれている
ワインが強烈にまずい
お願いだから

500ミリ
この500ミリで
この心を悲しい共感だけにさせてくれ
強烈にまずい
この500ミリで

ぼろぼろ泣かせてくれそういった
絵にしてくれ映像に
君の写真を見ながら
強烈にまずいワインのんで
わかるわかるもうほんとよくわかるって
ぼろぼろ泣いているそういった絵にしてくれ
そういった絵にして売っちまってくれ
Saatchiとかその辺に売っちまってくれ
そうして売れたらもういい
もう芸術はしなくていい
芸術生きるだけでいい
生きるだけでいい

外はほら
いい具合に雷じゃないか
稲妻に打たれに行こうか
そうなるだろう君が今ここにいたら
この500ミリで

魚が君に話しかけている
君が裸で答えている
僕が君に話しかける
君が裸で答える


      (目は閉じたままだけれど)


稲妻が走る夜空は紫色だ
今夜
どこにいるんだ君は
もう水からは上がったのか
魚たちは君を食べたのか
君の食べられたい部分を食べたのか
魚たちはついばんだのか君の食べられたい部分を
やさしく



海に突き出た教会に行ったこと
満月だったこと
君が漫画みたいな景色だって言ったこと
頂上について
教会の鐘鳴らして
お願いしたこと

そのあと
蝋燭つけて
順番で
歌ったこと

そういえば君が始まりで
そのあと同じように真夜中に
日本に帰る友達をあの教会に連れて行った
鐘鳴らしてお願いして
みんな始めは恥ずかしがるけれど
やっぱり歌うんだ
一番好きな歌を
だって、歌わなきゃねえ
あそこであの場面で歌わなかったらいつどこで歌うんだ


僕らがあの頃イギリスでよく聞いていた
THE AUTEURSが終わったから
BREGOVICのEDERLEZIでもかけよう
君が好きだって言っていた
AUSENCIAを今
めちゃくちゃな音量で聞こう
お隣さんもみんな
聞き入るだろう



そういうことでいいのに
そういうことで

おい

なあ




ちくしょうちくしょうちくしょう

やさしく

澄んでいるから
魚がいるから
君が裸だから
きれいに泳ぐから
きれいだから
魂だから




(目を開けて)











君の
僕の
音の
夜の
水の
魚の
ワインの
なみだの
雷の
紫の
ぼろぼろの
500ミリの



結局
それは
芸術だと
僕は
信じる

















自由詩 AUSENCIA Copyright 水在らあらあ 2006-07-13 19:25:41
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