鳥羽の夏
あおば

夏が来ると
波が立って
春の子供達が
息を切らせて
砂浜を駆けてゆく
走るのは
寒いからではない
嬉しくて走るのだ
水遊びに行くのだ
息を切らせて
水遊び?

今になり気がついた

季節感の誤りを
間違いの訂正を
息を切らせ

息を弾ませ
にと
▼の顔した
銀色の
コーリン鉛筆で
訂正する

三菱鉛筆でなくて
なぜ
コーリン鉛筆かは
トンボ鉛筆に聞いてくれと
今更考えるのも嫌になり
匙投げたふり

鳥羽の浜に
夏の砂浜にひっくり返る
熱い砂が背中にくっついて
火傷しそうに感じる
照り返る太陽光線がまぶしくて
目を細めるから
いい男もいい女もみんな目が細くなり
異国の人のような表情で
少し怖い

海から上がって
水の綺麗な
五十鈴川に
鯉を見に行く
緋鯉と真鯉が
夫婦のように
連れ添って
泳ぐのを
一昨年生まれた女の子が
玩具を眺めるような目をして
慈しむのが微笑ましくて
明るく記憶する梅雨の夕べは
宿舎の光を少しだけ尖らせて
ことば遊びの夏を演じている




未詩・独白 鳥羽の夏 Copyright あおば 2006-07-13 19:00:08
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